今回紹介する浅葉 弾さんは、横浜市金沢区で“デザイン”や“アート”といえば、必ず名前が挙がる人物。しかし、ご自身では「自分はアーティストではない」と言います。そのココロは?
父親は数々のCMやポスターで名を馳せた著名なアートディレクター、母親は子供デザイン教室の主催者であり、金沢文庫芸術祭を立ち上げた人物……と芸術的に恵まれた環境で育った浅葉さん。グラフィックデザインの専門学校を卒業後に8年間、お父様が社長を務める浅葉克己デザイン室で修行し、広告代理店にも勤務するなど、商業デザインの王道と言える道を歩んできました。
現在は広告やポスター、パッケージなどのアートディレクションを手掛ける会社「ダンデザイン」の代表を務めるとともに、横浜市金沢区にある「アサバアートスクエア」で子供デザイン教室を指導。さらに様々なアート関連イベントで子供向けのワークショップを主催したり、金沢文庫芸術祭の実行委員長を務めたり、と八面六臂の活動をされています。
「商業クリエイティブの仕事は軌道に乗り、信頼できるスタッフにも恵まれているので、彼らに任せることができる。僕自身の活動としては、子供たちとのアートイベントをもっと増やしていきたいな、と考えています。“アートイベントのおじさん”として知ってもらえたら嬉しいですね」
かつて学校のプールくらいの大きさの布を体育館に敷き、そこにホウキなど画材以外のものを使って色を塗り、好きな生き物の絵を描く……など、子供なら誰でも大喜びしそうなワークショップを企画したことも。東日本大震災の被災地をスタート地点として、日本各地を渡りながら長大なロール布に絵を描きつないでいく「お絵描きバトン」という企画も継続中です。子供たちにアートを教えるにしても、「何かしら遊びの要素を入れたくなる、何をしたらみんなが驚くかな、と想像するのが楽しい!」と言います。
「世の中に未来につながる何らかの影響を与えられるのが、アートのもつ力だと思っています。その作品を見て感動したのがたとえ自分ひとりであったとしても、それはアートと呼んでいい。
デザイン教室は、自分の手で、人を感動させられる凄い作品を作ることができた! という達成感を体験してもらうための場所。どんな内容にするかは毎回、頭を悩ませていますが、描く対象や画材などにはあまり制限を設けず、自由なテーマでやっています」
子供たちが成長するプロセスに最も喜びを感じる……と語る浅葉さん。冒頭で自分はアーティストではない、と語った真意は、「自分自身を表現するより、子供達をアーティストに育てるプロデューサーでありたい」という思いにありました。