川上大祐さんの肩書きは、DIYアドバイザー兼、美術大工。前者はイベントなどでワークショップを開いたりしながら、DIYの楽しさと技術を伝える仕事。後者は展示会のブースを製作したり、商業施設のディスプレイを作ったりする仕事です。DIYの魅力についてお話を伺うため、神奈川県葉山町のご自宅にお邪魔してきました。
木の質感が外観にもそのまま活かされた、山小屋のような雰囲気が素敵な2階立てのご自宅。招かれて中に入ると、玄関(というより広さからすると土間)には薪ストーブが置かれ、屋内は大きな吹き抜けになっていました。
「この家に、部屋といえる場所はここしかありません。設計士さんには、薪ストーブの熱がうまく対流するような構造にすること、子供たちが2階にある自分の空間に行くときにも、必ずリビングを通ってから行くような動線の家にすることをお願いして図面を引いてもらいました」
なんとこの家、川上さんが工務店の人に協力してもらい、“セミセルフビルド”で建てたとのこと。棟上げ以降の作業は、外装の杉板貼りから内壁の漆喰塗りまで、ほとんど大工さんひとりと川上さんの二人で行ったというから驚きです。
「自分たちが住む家は、自分の手で作りたいな、という思いが以前からありました。思ったとおりの作りにしたいということ。そして毎日暮らす家なので、壁の中がどうなっているのかまで知っておきたい、という思いがありました」
DIYの楽しさが凝縮されているかのようなご自宅。思うようなサイズ、形に作れること。既製品と違って使うほど愛着が沸いてくることこそ、DIYの魅力だと語ります。
でも、大工仕事など全く未経験の人が、DIYに挑戦するのは難しいのでは? そう尋ねると、川上さんは倉庫から数本の木材と板、電動工具と接着剤を持ってきました。「DIYの楽しさは口で説明するより、実際に体験した方が伝わります。この材料で小さなパレット(上に荷物を載せて運搬したりするための道具)と黒板を作ってみましょう」とのこと。
DIYは中学生で技術の授業を受けたとき以来でしたが、優しく丁寧な指導のおかげで、あっという間にふたつの作品ができ上がりました。しかも、我ながら悪くない出来映え。
「現代は電動工具や接着剤などの便利な道具がたくさんあるので、それらの正しい使い方を覚えるだけで、誰でもモノ作りができます。壁につける棚など簡単なモノからでいいので、ぜひトライしてみてください」
ワークショップでは、同じ材料を使っても作り方や出来上がる形が人によって異なり、その人の性格がよく表れて面白い、と川上さんは言います。木に触れ、手を動かす。モノを作ることそのものに、DIYの楽しさがあることを実践的な手法で教えてくれました。