横浜市金沢区に、みかんを育てている農園があるのをご存知でしょうか? 柴漁港、八景島を見下ろす丘の上にある「柴シーサイド恵みの里」です。毎年秋にはみかん狩りが体験でき、地域の子ども達に大人気だそう。取材時(8月上旬)は青々とした実を付けていました。
そのみかんを原料に、ドレッシングを作っている人がいます。それも熟す前の果実“青みかん”を使っているのが特徴です。
「みかんは、収穫する果実に養分を行き渡らせるため、あるいは樹を休ませるために、ある程度の量を実が青いうちに摘果(間引き)しなくてはなりません。摘んだ実はどうなるのかというと、不要品としてほとんど廃棄されてしまうのです。今から7年前、私は野菜ソムリエのイベントで青みかんと出会いました。自分で収穫した青みかんを搾って飲んだところ、酸っぱくて、すごく美味しい。自宅に持ち帰り、ドレッシングやモヒートを作ってみると、これも美味。こんなに美味しいものを捨ててしまうのはもったいない、何か活かす方法はないだろうか、と常々考えていたのです。
そんな折り、横浜市の『地産地消ビジネス創出支援事業』の募集があり、以前から温めていた『横浜産青みかん商品化プロジェクト』のアイデアを応募しようと思いつきました。金沢区に住む友人から柴シーサイド恵みの里でみかんを栽培している小山收一さんを紹介してもらい、私の企画をお話ししたところ、快く協力いただけることになったのです。そうして無事、『地産地消ビジネス創出支援事業』に応募することができ、採択されたのが“横浜あおみかんドレッシング”の始まりでした」
そう話すのは、野菜ソムリエ、ラテン料理研究家、地産地消の案内人「はまふぅどコンシェルジュ」としても活動しているアマンダリーナ代表の奥井奈都美さんです。そこからの行動は早く、自作ドレッシングの調合を元に生産してくれる食品工場とも提携し、摘果から搾汁、ブレンド、ボトルへの充填、ラベル貼りまでのプロセスを自ら築いて、商品化に至りました。
横浜あおみかんドレッシングは原料に果汁を45%以上使い、青みかんのフレッシュな香り、酸味がそのまま味わえるのが特徴です。野菜ソムリエの資格をもつ奥井さんだけに、野菜をより美味しく、たくさん食べられるドレッシングとして開発されました。仕入れる青みかんの品質にもこだわり、直径35mm以上、摘果してから3日以内、消毒してから45日以上経過していること、という厳しい基準を設けています。現在では横浜と西湘で採れたみかんを材料に、オイル入りとノンオイルのドレッシング、横浜の老舗調味料メーカーとコラボレートして作ったポン酢ドレッシング、サワーやソーダに入れて楽しめる100%ストレート果汁のジュース、とラインナップも拡がりました。
さらに一昨年からはアマンダリーナが参画してるSDG横浜金澤リビングラボ」で「金澤八味唐辛子」という地域産品をつくるプロジェクトも始動。こちらは地元産の食材を5つも使った七味ならぬ八味で、奥井さん監修のもと、横浜市立瀬ヶ崎小学校の子ども達(当時6年生)が唐辛子やシソの栽培、ラベルデザインなどを手掛けました。
「“もったいない”から“おいしい”へ」をテーマに、地域とのつながりを大切にして活動している奥井さん。今まさに育たん! とする青みかんにも負けない、バイタリティの持ち主でした。
※SDGsをテーマに、産学官が連携して地域課題の解決に取り組む場であるリビングラボの金沢拠点。アマモを肥料として活用した循環型農業や地産地消商品開発などに取り組んでいます。