ヒト・モノ・コト

石井直樹さん

/石井造園 代表取締役

石井直樹さん

/石井造園 代表取締役

今、企業の価値は利益を上げるだけでなく、CSR(企業の社会的責任)を果たすことが重要と言われています。しかし実際のところ、中小企業が本業に勤しみながら、社会に貢献する活動を行うことは、そう簡単ではありません。「特別なことをする必要はないと思いますよ。皆にとって身近なこと、できることから始めたらいい」。そう語るのは「石井造園」代表の石井直樹さん。地域社会に貢献する企業として、CSR活動に力を入れた企業経営を行っています。

お父様が創業した造園業を引き継ぎ、石井さんが代表に就いたのは、自身が38歳のとき。地域に貢献する活動を積極的に始めたのは、ふとしたことが契機だったと言います。

「当時、栄区役所に観葉植物を納めていたのですが、数か月経った物は引き上げて廃棄しなければなりませんでした。もったいないなと思って、会社の近くにある養護学校の職員の方に、そうした観葉植物を寄付させてもらえないかとご提案したところ、喜んで引き取ってもらえたのです。その出来事をきっかけとして、学校の卒業式にまで招待してもらえる関係に。私にとっては不要になった物を差し上げただけなのに、これほど人に感謝されるのか、と感動したのをよく覚えています」

当時、青年経済人が集い、社会に貢献する活動を行う横浜青年会議所メンバーでもあった石井さん。20代から14年間にわたって在籍し、地域貢献、街づくり、人づくりの大切さを徹底的に学びました。自らの会社でもネットワークや人材を活かし、横浜の役に立つ事業が何かできないか、と思案。青年会議所での経験がなければ、そうした考えも浮かばなかっただろう、と言います。

地域に根ざした家柄であることも、理由のひとつでした。石井家は栄区笠間に江戸時代から暮らし、直樹さんで12代目となる家柄。それだけに地域との関わりも深く、地域に恩返しをしたい、という思いは以前から強かったそうです。

「神社のお祭りでは毎年、宵宮が明けた土曜午前中に寄付金を持参していました。必ずそのタイミングでなければならず、金額も毎年一緒。同じことを何百年と続けていくことが大切、という価値観が幼い頃から身についていました」

会社代表となった後、地域での清掃活動など、身近なことからひとつずつ、自らができる社会貢献活動を積み上げていきました。現在、石井造園では、横浜みどりアップ計画に賛同した地域住民への苗木配布、イベントでのワークショップ運営、本業で使う電力の100%再生可能エネルギー調達&カーボンオフセット等々、多岐にわたるCSR活動を展開しています。そうした活動は外部からも評価され、「横浜型地域貢献企業」「かながわSDGSパートナー」「Y-SDGs  supreme認証」など数多くの認定を受けるに至りました。

活動のフィールドは今や地元を飛び出し、横浜市全域にまで拡がっています。金沢区・金沢センターシーサイド名店会内にある「並木ラボ」で今年からスタートした、観葉植物ショップ「グリーン シンフォニー」運営もそのひとつ。「並木ラボ」は横浜市立大学が文科省による「地(知)の拠点整備事業」選定を受けて設置した地域のサテライト拠点で、石井さんは事業の外部評価員となったことをきっかけに、その後のラボの運営にも関わっています。「グリーン シンフォニー」は石井造園の初めての直営店舗として、植物についての相談はもちろん、室内緑化などの提案もしてもらえるコンセプトショップ。コロナ禍だからこそ緑を通じて人々の心を癒やす空間が必要、という考えから生まれました。

これほどCSR活動に積極的な企業は希有でしょう。「良いことをしていると、人も仕事も自然に集まってくる」と石井さんは言います。ですが、それは動機でなく、あくまで結果に過ぎません。これまで自分が暮らし、恩恵を受けてきた横浜を今よりもっと素敵な場所にしたい! という純粋な思いが、石井さんの行動力を支えていました。

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