今年から始まったNHKの大河ドラマは、鎌倉時代の武家政権成立にスポットを当てた物語。舞台となった鎌倉市はさっそく、大河ドラマ関連情報の特設ページを開設するなどして、大いに盛り上がっています。ところで、鎌倉市の隣にある横浜市金沢区にも、鎌倉幕府の立役者である源頼朝ゆかりの地が多く残されているのをご存知でしょうか? 今回はそんな名所古刹を巡ってみます。
まず紹介するのは、三井アウトレットパーク 横浜ベイサイドから南東に2kmほど行った所にある「富岡八幡宮」。住宅街の中にひっそりと佇むこの神社、建久2(1191)年、源頼朝が鎌倉幕府を開くにあたり、鎮護のために鬼門の方角にあたる富岡に鬼門除けとして造営したのが始まりとされています。
参道を登ると、小山の上に立派な拝殿が。頼朝は摂津の難波・西宮から蛭子尊(ヒルコノミコト)≒エビス様を勧請(神仏の分霊を迎えること)したため、今でも八幡様と一緒に海の守り神であるエビス様が祀られています。実際、応長の大津波(1311年)に襲われたときには、八幡宮のある山が周辺地域を守ったことから「波除八幡(なみよけはちまん))と称ばれるようになったそうですよ。
続いて、金沢八景の瀬戸神社へ。国道16号を南に走っていると、右手の小高い丘の上に瀬戸神社が見えます。かつて、この付近一帯は潮の干満により海水が出入りする瀬戸(狭い海峡)になっていて、潮の流れに神秘性を見出した古代の人々が神様を祭ったのが、瀬戸神社の起源だとか。神社周辺からは古墳時代、既に祭が行われていたことを示す遺物が出土しているそうです。
時代は下り、鎌倉幕府を開いた源頼朝は平氏打倒のために伊豆で挙兵するにあたって、この霊験あらたかな地に伊豆三島明神(三島大社)の分霊を祭りました。社殿の造営も行われ、現在のような立派な姿となったのが鎌倉時代のこと。境内には頼朝の子である源実朝が愛用したといわれる舞楽面二面(抜頭面と陵王面)など、多数の文化財が所蔵されています。
瀬戸神社から国道を挟んで海側にあるのは、頼朝の妻であり、尼将軍とも呼ばれた北条政子ゆかりの琵琶島神社。頼朝が瀬戸神社を創建した時、政子も普段から信仰していた滋賀県・琵琶湖の竹生島弁財天を勧請し、琵琶島神社が創られました。現在、琵琶島神社は陸つづきになっていますが、創建時は海上に島が築かれ、瀬戸神社と橋でつながっていたそう。対になっている瀬戸神社と琵琶島神社を見ると、ふたりの仲睦まじさが伝わってきますね。
金沢区洲崎町、海の公園近くにある龍華寺(りゅうげじ)にも行ってみます。ここは頼朝が瀬戸神社の別当寺(神社に付属する寺)として六浦山中に建てた「浄願寺」が起源と伝わる寺。戦乱や火災で浄願寺の伽藍が荒廃したため、明応8年(1499)に融弁上人が光徳寺と併合し、現在の場所に移転して龍華寺となりました。こちらも住宅地の中にありますが、境内には“ししおどし”があったりして静寂が感じられます。御室桜(おむろざくら)、牡丹、紫陽花などが咲く“華の寺”としても、地元の人に愛されています。
都市化された風景の中に今も残る、源氏ゆかりの名所古刹。大河ドラマ・ファンでなくても楽しめるスポットばかりです。鎌倉時代に旅した気分になれるかも。三井アウトレットパーク 横浜ベイサイドでのお買い物帰りに立ち寄ってみてはいかがでしょうか?