横浜市金沢区に暮らす人たちにとって待望だった、コミュニティFMがついにこの10月1日開局しました。周波数85.5MHz、「金沢シーサイドFM」です。横浜市内では青葉区、戸塚区、中区に続く4例目の開局。株式会社金沢シーサイドFMで共同代表を務める松原勇稀さんに開局までの道のり、コミュニティFMへの思いについてお話を伺いました。
松原さんは関東学院大学に通う現役大学生。学生社長になったのは松原さんが所属しているゼミがきっかけだったと言います。
「経済学部でメディア論を研究している伊藤明己先生のゼミでは10年来、金沢区にコミュニティFMを立ち上げるプロジェクトを企画してきました。計画が具体的になり、株式会社を設立する段階で代表者がまだ決まっていなかったので、私が立候補したのです」
松原さんがコミュニティFMに関心をもったのは、2011年に発生した東日本大震災が契機となったそう。地域防災減災において重要な役割を果たす地域メディアの存在を知り、コミュニティFM設立に向けて活動している伊藤ゼミの門を叩きました。その後、ゼミのフィールドワークなどで地域メディアについて研究するうち、コミュニティFMが防災減災だけでなく、地域活性化においても大きな役割を担っていることに気が付きます。
会社代表になったのは良いものの、それから実際に開局するまでは苦難の連続でした。会社設立から予備免許を取得するまでに約一年半。送信所などの設備や運営基盤に乗せるための手法について、膨大な量の資料を総務省に提出したそうです。運営を株式会社として地域企業から少しずつ出資を募るスタイルとしたのは、地域メディアとして公共性を担保するため、自分たちのFM局として地域に定着させるためでした。現在、60余名の株主、約40社の協賛企業、約100社ものスポンサー企業が集まっています。まさに地域に暮らす人と企業が自ら作るメディアとしてスタートを切ることができた、と言えるでしょう。
番組に出演するパーソナリティも、敢えて未経験者から募集。そこには「聴く人にとって、より身近な存在に感じて欲しい」という思いがありました。オーディションには100人以上が集まり、トーク力よりも“人間性”を重視して選考したそうです。地域に暮らすママたち、元PTA会長、元ホテルマン、学生など地域に暮らす様々な人たちが、パーソナリティとしてのトレーニングをみっちり積んだ上でデビューします。
「世界はこの数十年の間にインターネットが急速に普及し、様々な情報が行き交うようになりましたが、自分たちが暮らす街の情報については以前よりもむしろ希薄になっています。街の情報を行き渡らせることで地域活性化につなげることが、金沢シーサイドFM設立の狙い。もちろん、防災メディアとしての役割も忘れていません。“あなたに伝える あなたが伝える”をスローガンに、地域に暮らす人が自ら発信したくなる、聞いた人が誰かに伝えたくなるメディアに育てていきたいと考えています」と松原さんは語ります。
金沢シーサイドFMは横浜市金沢区、磯子区、横須賀市追浜町で聴くことが可能。地域に暮らす人はもちろん、買い物などでエリアを訪れた人もぜひFMラジオを85.5MHzに合わせてみましょう。